ドキュメンタリーの映画「どうすればよかったか?」を観にいきました。医師で研究者の両親、医学部に進学した姉をもつ弟の監督が、統合失調症を発症した姉と家族の姿を約20年間記録したものです。時代背景もあると思いますが、両親が精神科から姉を遠ざけて、家の玄関に鎖と南京錠をかけ、姉を閉じ込めるようになっていくことに、わだかまりを抱えながらもカメラを回すことを選び、「どうすればよかったか?」と問いかけている作品です。
怖いもの見たさ、興味本位といったところが観たいと思った理由ではありますが、一昨年札幌でおきた殺人事件の裁判情報がその後押しになりました。精神科医の父親とその妻が、自身の娘の猟奇的ともいえる殺人事件の関与を問われているものです。こちらも、正しい治療が受けれられていたならと思わずにはいられませんが、自身や家族のこととなると、医学や医療知識が悪影響を与えることもあるように思います。実際、精神科に限らず自分の家族は診ない医師もいるとききます。
そしてひと昔前の精神科の敷居は、今よりずいぶんと高かったように思います。精神疾患の多くに治らないイメージも強く、入院しようものなら退院できないような間違った認識を私自身ももっていました。そこには、精神疾患への差別的な気持ちもあったように思います。
ですから、この家族のとった姉への対応も理解できる部分もあります。あの頃ならしかたなかったかもしれませんし、いっそ全く無知ならば余計なことも考えなかったのではないかと思います。ただ、スクリーンに映る彼女の苦しそうな姿に、虐待の文字が頭に浮かびました。何かに感情を乱され、吐き出すように声をあげる彼女が映っていました。しかし一方で、違うと思いながらも当時20代で学生の監督が、姉の精神疾患を隠そうとしているとも思われる両親を前に、それに抗ってすべての責任を負う行動を起こすのも難しかったように思います。20年の間に、行政と繋がろうとしたふしの場面もありました。そして「我が家の25年は統合失調症の対応の失敗例です。」と、映画チラシにもあります。
楽しい映画ではありませんが、いまいちど精神疾患について、そして家族のあり方・家族との接し方、そういったもののすべてが変わろうとしているいまだからこそ、深く考えさせられる問いとなりました。
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