9月26日は世界避妊デーですが、あまり話題にのぼらなかったように思います。避妊はデリケートな問題ですが、とても大切なことなのに。
最近「あれはどうなった?」と思い出すことのひとつに、緊急避妊薬(アフターピル)の市販化があります。性交直後の服用で望まない妊娠を防ぐことができますが、使用には現在医師の処方箋が必要です。
緊急避妊薬の主な成分は黄体ホルモンで、性交後72時間以内に飲むと妊娠を高確率で回避できます。避妊失敗や性暴力などによる望まない妊娠を防ぐための市販化を要望する声が高まっていたため、厚労省も6月に調査研究として処方箋なしで販売することを決定し、夏ごろ開始としていたのですがずれ込んでいました。
ここに来てやっと、医師の処方箋なしでの試験的な薬局販売の11月28日からの開始準備を、日本薬剤師会が進めています。各都道府県で要件を満たした調剤薬局2~3店舗ずつ、全国計145店舗で販売する。試験販売する薬局の要件は原則研修を受けた薬剤師がいる・夜間や土日祝日の対応が可能・近くの産婦人科などと連携できる・個室があるなどプライバシーが確保できるの4つ。想定販売価格は7000~9000円。16歳未満は試験販売の対象とせず、医療機関などを紹介する。16歳以上18歳未満は保護者の同伴が必須条件。研究参加に同意した人にしか販売せず、購入者は薬剤師の面前内服し状況調査のアンケートに答えることになる。緊急避妊薬はノルレボ錠とジェネリック医薬品のレボノルゲストレル錠。事前の電話連絡が必要で、薬局一覧を同会がウェブサイトで試験販売開始時に公表することになっています。
たどり着けるでしょうか?72時間以内に。避妊失敗は未だしも、性暴力を受けてしまった状況等で難しいと思うのは私だけではないと思います。それでも、試験販売は一歩前進に変わりありません。当人はもちろん、未成年者の保護者にも情報が届くことを願ってやみません。
産婦人科の医師に「診察室で妊娠を告げられた時に、うれしいと思うかしまったと思うかで、おなかの赤ちゃんの運命が変わる」と看護学生だった頃に言われたことを、私は今でも覚えています。当時はなんて医師らしからぬ非科学的なことを言うのかと思いましたが、いまにして思うと日々様々な女性患者と接している産婦人科医なりに思うところがあったのではないでしょうか。いまでは、そういう医師に診てほしいとさえ思います。
また今回の市販化のニュースに触れるまで、緊急避妊薬の服用は初期中絶にあたると思っていました。しかしながらこの薬は排卵を抑制して受精を妨げるのですから、そもそも妊娠が成立していません。人工妊娠中絶は堕胎にあたり、精神的負担や手術の合併症のリスクもあります。この薬にたどり着くのが、図らずも望まない妊娠をしてしまった場合いまのところ一番いいのではないでしょうか。そもそも望まない妊娠がないことがいいのはいうまでもないでしょう。妊娠がわかったとき、誰もがうれしいと思える環境にあることを願ってやみません。
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